【ガンマメ】宇宙空間で銃を撃つとどうなる?


問題は「真空」の方だ。空気がない(正確に言うと「極めて薄い」)というのは、機械の作動にはけっこう大きな影響が出てくる。

「ああそうだよね、酸素がないと火薬が燃えないからね」

いやいや、それは違う。たとえ空気が無くても火薬は燃える。いや正確な書き方をするならば、火薬そのものに燃焼に必要な酸素は既に含まれているので、空気中の酸素を特に必要としないのだ。実際にロケットで、燃焼が終わったエンジンやら衛星を覆うフェアリングやらを切り離すときには火薬の爆発を使っている。「宇宙空間でも火薬はちゃんと燃える」というなによりもの証拠だ。
 

image004左写真で、赤いコードがつながっているいかにも物騒っぽい雰囲気のある円筒形の部品が、人工衛星とロケットの連結部分を吹き飛ばすためのもの……といっても、ちょうど写真の中心にある細いボルト内部に小さな爆薬が仕込まれていて、その爆発によって連結が外れるだけなのだが。2006年に打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」の開発中に公開されていたニュースページより引用。

真空という環境による影響で一番問題になるのは、金属同士がくっついてしまう「固着」という現象が起きてしまうことだ。空気中では、金属と金属をくっつけた状態で放置しても、普通は勝手にくっついてしまうということはない。間に空気が入って、一種の潤滑油のような役割を果たしてくれるからだ。

しかし真空中ではその空気が存在しない。さらに厄介なことに、本来の意味での潤滑油=オイルも真空中では一瞬で蒸発してしまい、潤滑油としての役割を果たしてくれない。その状態では、バネの力で強く押し付けられた金属部品は、かなりの確率で固着を起こしてしまうと思われる。

たかが「バンドを外す」だけのために、ボルトを火薬で破壊するなんていう豪快なことを行うのは、宇宙空間では容易に金属同士がくっついてしまうため、「モーターを使って留め金を外す」というようなやり方では確実に作動するかどうか微妙になってしまうからだ。「絶対に失敗できない」という事情もあり、確実を期すのならば留め金を火薬でふっ飛ばしてしまえってことになる。

もちろん、ありとあらゆる作動を火薬で行ってるわけではない。宇宙探査機や実験センターでも、普通にモーターでアームを動かす、みたいなことも行われている。ただその場合も、真空中で十分な確実性を持って作動させるための部品の表面処理や可動部の設計、蒸発しない固体ベースの潤滑剤の選定など、数限りないノウハウの積み重ねが設計には反映される。つくばにあるJAXA研究センターには、真空環境での様々な材料特性の変化を調べるための専用の設備があるのだそうな。
 

tsukuba_04JAXAの筑波宇宙センターにある、超高真空材料表面特性評価試験設備。真空環境下で材料の表面がどのように変化するかを調べたり、普通の液体オイルでは一瞬で蒸発してしまって使いものにならない真空環境下でも使える固体潤滑剤の特性評価などを行っているとのこと。(写真は、JAXAの筑波宇宙センター紹介コーナーより引用)



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プロフィール

 
池上ヒロシ
各種雑誌にてライターをやっています。
銃器の構造、歴史、射撃技術などが得意分野です。メインフィールドはピストルを使った精密射撃です。
 
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