【ガンマメ】ライフリングは螺旋ではないって本当?


「勘違いしている人も多いのですが、ライフリングは螺旋ではありません…」というようなことを自信満々に書いているブログとかWebサイトをいくつか見かける。最初は、何かの勘違いをしているだけなのだと思っていたが、あまりにも多く見かけるのでもしや元ネタみたいなものがあるのかと調べてみたら、案の定というか銃器評論家の大御所のような方が自らの著作物でそのようなことを書いているようで、多くはその孫引きというか受け売りのようなものらしい。

そういう勘違いをしている人に共通なのが、螺旋は「ぐるぐると渦を巻く一本の線」で、ライフリング(施条)は「縦方向に何本も刻まれた直線」である、よってその二つは違う…というのが論拠になっている点だ。なぜそういう勘違いをするのか? 「螺旋とは、何か」というそもそもの点を良く理解していない、あるいは間違って覚えていることが理由なんじゃないか思う。

ライフリングは、紛れもなく螺旋の一種だ。今回はそのことをイチから説明してみたいと思う。

そもそも、螺旋とはなんなのか?

身近にある螺旋というと、たとえば螺旋階段とか、ネジとか、バネなんかが該当すると思う。一本の線がぐるぐると渦を巻いて一方向に移動していくもの、というイメージがあるだろう。数学的な定義では次のようになる。

円筒の中心からの距離を「r」、円筒の底面からの距離を「z」としたときに、

r=a
z=bθ

で表される線が「螺旋」である。日本語として読める表現で書くと、

「円筒の外周に沿って、一回転するごとに決まった量だけ上昇(下降)する線」というような感じになるだろうか。一回転したら1cm進む場合、半回転なら5mm、1/10回転なら1mmだけ進むということになる。

ネジの規格を表すときに「ピッチ」という言葉を使うが、これはネジ山からネジ山までの距離、つまり「一回転あたり、どれだけ進むか」を表したものだ(※一般的に使われている、ネジ山/溝が一本だけの1条ネジの場合。コメントを受けて訂正 2014/08/22)。ピッチが小さければ小さいほど一回転あたりに進む距離が短い「細かいネジ」と呼ばれる。その逆をなんというのか、あまり慣用的な表現がないのでちょっとわからない(「太いネジ」だとちょっと意味が変わってきてしまうし)。

ライフリングというのは、そのピッチを大きめにとったものである。「ライフリングピッチ」という言葉を聞いたことがある人も多いかもしれない。通常、インチで表される。ライフリングが、どれだけ進むと一回転するのかを表したものだ。

ライフリングピッチの「ピッチ」の意味は、ネジのピッチと全く同じ。違いはその大きさだけである。ネジのピッチは1mmとか2mmといった小さい数字で表されるのに対し、ライフリングピッチは12インチとか14インチといった大きい数字になる。

もちろん、この螺旋が一本だけではライフリングとして意味を成さない。同じ「螺旋」が角度を変えて刻まれることでライフリングとして機能する。普通に「銃」として使われるバレルのサイズでは、多くの場合6本程度だ。

「ライフリングは螺旋ではない」と主張する人は、「一本の線がぐるぐると渦を巻いているのが螺旋。ライフリングはそうじゃなくて何本もあるから螺旋じゃない」みたいな勘違いをしているようだ。しかし数はこの場合、何の関係もない。何本あろうが、その一本一本が数学的に定義された「螺旋」である以上、ライフリングは紛れもなく螺旋である。

とまあ、このくらい書けば「ライフリングは螺旋じゃない」派の人たちは「ぐうの音も出ない」状態になるんじゃないかとは思うのだけれど、念のためもう一つ、ライフリングが螺旋であることの証拠、というか分かりやすくて納得しやすい事実を挙げておこう。

まず間違いなく誰でも「うん、あれは螺旋だよな」と納得してもらえるものの一つに「ネジ」があるだろう。「いや、ネジは螺旋じゃない」とか言い出す人がもしいたらお手上げだけれど、そうなるともう「あなたの世界の螺旋って、いったいどこの螺旋かしら」としか言いようが無いので置いておく。

ネジには雄ねじ(おねじ)と雌ねじ(めねじ)の2種類がある。銃のバレルに近い形をしているのはいうまでもなく「めねじ」の方なのでそちらを例に取って説明しよう。

ネジの加工方法には様々なものがあるが、その一つが旋盤を使って材料を回転させ、バイト(切削工具)をその回転数に合わせて送り込んでいくというものだ。旋盤というのは一回転したら何mmバイトが送り込まれるか、というのを調整できる箇所があり、そこのダイヤルを回すことで自由自在なピッチのネジを削りだすことができる。

バレルのライフリングはどのようにして加工されるのかというのにも様々な方法があるけれど、もっとも原始的というか単純なのが「フックカッティング」と呼ばれる方法。バレルを旋盤で回転させて、「フックカッター」という工具をその回転数に合わせた速度で送り込むことでバレル内面を削る。一回だと一本のライフリングしか削れないので、位置を変えて何回か繰り返すことで、通常使われる六条とか五条のライフリングをもったバレルを作り出すというわけだ。

使う工具の形と、送り込む量が違うだけで、ライフリングの加工方法はネジの加工方法と同じものだということがわかると思う。ネジが螺旋なら、ライフリングも螺旋だ。

大御所、というか「その道の専門家」みたいな人でも、ちょっとした思い込みや勘違いから間違ったことを言ったり書いたりしてしまうことはあると思う。自分自身、ぜんぜん大御所でもなんでもないだけに、とんでもない大嘘を自信満々に言っちゃったことは一回や二回じゃなく、思い出すだけで後悔と恥ずかしさで床を転げまわりたくなる。

だからお願いです、「え? それ違うよ?」みたいなことを言ったり書いたりしている人がいたら、それがたとえ「先生」と呼ばれるような人だったとしても、なるたけ早めにその間違いを指摘してあげてください。できれば優しく。勘違いがいつのまにか広まって修正するのも難しい状態になっちゃったりすると、なんていうかこう、いろいろと厄介なことになるので…。




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4 Responses to 【ガンマメ】ライフリングは螺旋ではないって本当?

  1. 匿名

    >>ネジの規格を表すときに「ピッチ」という言葉を使うが、これはネジ山からネジ山までの距離、つまり「一回転あたり、どれだけ進むか」を表したものだ。

    山から山の距離の事をピッチといいますが、1回転あたりどれだけ進むかは「リード」といいます。
    一般的に使われている1条ネジではピッチとリードは同じ長さになりますが、ライフリングと同じく複数の螺旋を組み合わせた物もあります。
    例えば2条ネジは1回転あたり2ピッチ進むのでピッチ≠リードになります。
    つまりピッチの説明として「一回転あたり、どれだけ進むか」は間違っています。

  2. 池上ヒロシ

    ご指摘ありがとうございます。確かにその通りですね。「ネジといえば一本の溝/山が螺旋状に刻まれているもの」という先入観で文章を書いてしまいました。

  3. 匿名

    ライフリングに関する間違いを探していたらこのサイトを見つけたのですが、探していた間違いの内容は螺旋云々ではなく
    「ライフルマークは線条痕、ライフリングは線条」とテレビ番組で紹介されていた件でした。
    ライフルマークの邦訳は施条痕か線条痕、ライフリングは施条や別の呼び方はあれど線条とは呼ばないと思うのですがこれはどうなんでしょうね。

  4. 池上ヒロシ

    コメントありがとうございます。

    「線条」、「施条」といろいろ表記があって、意味があって使い分けられているのか、もしかしたら混同されているのか、どうもわからない部分がありますね。実をいいますとこのエントリーにおいてもその二つを混同してしまっている(イラストでは「線条」と書いてるのに文章では「施条」と書いてしまっている)部分があったりします。文章はすぐに書き直せますがイラストを描き直すのは面倒なんでそのままになっちゃってるというのが真実だったりするのですが。

    ただ、表記に2通りある、あるいは混同されているのかどうかとはかかわりなく、「円筒内に斜めに入ってる何本かの線」というのは要は「螺旋」のことなのだ(※)、というのが本エントリーの主旨なので大した問題ではないかと。

    ※特殊なケースでは厳密な「螺旋」ではない場合もあります

 

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