ロシアvsラトビアでバトルが勃発【海外の反応】


ラトビア製のTRACEは、ロシア製のSCATTの悪質で低品質なパクリ製品なのか、それとも有力な競合製品なのか?
 

scatt-basic17APS-3(日本製のエアガン)に取り付けたSCATT Basic。射撃技術を向上させるための道具として見た時には、それこそチートアイテムに近いといっていい抜群の効果があります。


銃に超小型のカメラを取り付け、USBでPCと繋げます。PCは画像を元に、「銃口が今どこを向いているか」を計算して割り出し、画面上に表示します。カメラには衝撃を感知するセンサー(ピエゾ素子)が内蔵されており、空撃ちをしたときの「カチン」という音、あるいは実際に弾を発射したときの銃声を検知して「今、弾が発射された」という情報をPCに送り、PCはその時点で銃口が指し示していた場所を「着弾点」として記録します。

……これがSCATTなどの射撃解析装置の大まかな仕組みです。弾を撃たずに射撃の練習ができるという利点だけでなく、自分の射撃技術がどういう状態なのかを詳しく調べて、問題点をあぶり出して有効な練習方法を選ぶ手助けになります。「解析する」というとなにやら小難しい感じがしますが、実際のところは「見えなかった部分が見えるようになる」という感覚に近いものがあります。

普通に弾を撃ってターゲットに穴を開ける従来の射撃練習では、「どこに弾が当たったのか」という情報しか残りません。弾着は、射撃プロセスの中では最後の最後に現れる結果に過ぎません。射撃しているところを横から見るとか、あるいは自分ひとりで練習してるときは内的感覚などから読み取れる情報というのもあることはあるのですが、射撃は他スポーツに比べると極めて動きが小さく、正確なところを読み取るのは至難のワザです。

その、「普通だったら表に出てこない情報」を詳らかに明らかにしてくれるのが射撃解析装置です。構えて狙いを付ける最中の銃の動きはどんなものなのか、トリガーを引くときに銃が動いたりしていないかどうかとか、そういったことが極めて詳細に表示され、記録されます。

今年の春に実際に自分用のSCATT Basicを購入してピストルに取り付けて撃ってみた時は、結果を見てかなりガクゼンとしたものです。良い感じに銃が止まってると思っていても実際には9点圏、下手すると8点圏まで銃口はフラフラと揺れ動いていることが判明したり、自分ではトリガーは(他選手とくらべても)相当に安定して銃を動かさずに引けてるという自負を持っていたのですがそんなことはぜんぜんなく、撃発直前に銃口があからさまに動いていることを見せつけられたり。できていると思っていたことが全然できていなかったことを思い知り、自分の射撃を最初から作り直す「初心者からやり直し」作戦を決行、なんとか目標への道筋が見えてきたのがここ最近です。
 

scatt-basic14モリーニに取り付けたSCATT Basic。マゼンタ色をした、なにやら高級そうな小型カメラのレンズが覗いています。


「10年のSCATT無しでの練習より、SCATTを使った3か月の練習のほうが勝る」という実体験から、「マジで上手くなりたいと思ってるのなら、銃を買い換えるよりSCATTを買うべき」と強く主張します。そのくらい、明確に成績アップに繋がると断言できるのが、射撃解析装置です。

ところで、射撃解析装置はSCATTだけではありません。有名どころではNOPTELとかRIKAホームトレーナーなんて製品もあります。私がSCATT Basicを買ったのは、他製品とくらべて際立って安かったからというのが理由です。公式サイトの直販価格で749ドル(8万3千円)、送料や消費税を入れても10~11万円くらいで手に入ります。日本の銃砲店経由で買ってもほとんど値段が変わりませんから(シースジャパンでの販売価格は11万9千円)、リスクのある個人輸入よりそっちのほうがお手軽かもしれません。ロシア製なのですが作りはけっこうしっかりしていて英語でのマニュアルもわかりやすく、射撃が盛んなアメリカ向けに対応ターゲットも豊富と「ロシア製らしからぬ親切なパッケージ」が特徴的です。

実は、昨年の夏あたりにSCATT Basicよりさらに安い射撃解析装置の発売が発表になっていました。「TRACE」というところから発売される「TRACE 10」という製品です。ほぼ試作品のような状態のものがまず販売され、ユーザーのフィードバックを受けて少しずつアップデートし、通常の「ちゃんとした製品」となったのは今年の春頃のようです。
 

traceTRASE公式サイト
https://www.traceshooting.com/

会社概要によるとラトビアにある会社とのことです。サイトに書かれている内容を見るとTRACE10のスペックはSCATT Basicとほぼ同等で、価格は579ユーロ(約7万5千円)、今なら「ユーザー2000人到達キャンペーン中なので10%引き」になるそうです。ちょっと心惹かれますね。


ただ、外観を見ると思いっきり3Dプリンター打ち出しそのままのガタガタなプラスチック製です。見た目もSCATT MX-02そのまんま、取り付け方法も同じです。なんといってもサイトの作りがちょっと下品です……具体的にはページリンクをクリックするたびに「2000人超えたので10%引き!」のダイアログが重なるようにして画面いっぱいを埋め尽くし、しばらく待ってから右上の×を押して消さないと先に進めなかったりするのはちょっとイラッとしました。

TargetTalkに、このTRACE10をかなり初期に購入、アーリーユーザーとして開発に協力してきた人による詳しい情報が投稿されました。「同価格帯のライバル」になるSCATT Basicとの違いなど知りたい内容が盛り込まれていて有用な情報だったので、抜粋して翻訳したいと思います。

……とそれだけで終わると単なる宣伝めいたエントリーになりますが、後半になって急展開があります。SCATTの関係者と思われる人物による「SCATTとTRACEの対決動画」がYoutubeにUPされ、その衝撃的な内容から、掲示板は「SCATT(の中の人) vs TRACE(の中の人)」による泥沼化一歩手前のバトルへと発展してしまうのです!

 

トレーニングシステム

Training systems (TargetTalk)


  • どなたか、いろいろな射撃訓練システムをリスト化して比較しているサイトをご存知ないでしょうか? ワイヤレスだったり空撃ち・実射の両方に対応していたりする、SCATTに似た新しいシステムもあるみたいですね。(モントリオール、ケベック州、カナダ)

 

  • SCATTを買いなさい、他に何も必要ありません。(ドイツ)

 

 

  • >TRACEのサイトを見てください。
    TRACEを使ったことがあるのですか? 私がTRACEについて見た唯一のコメントは製造業者によるもので、明らかな「自社製品ヨイショ」でした。Scattを使いこなしている人による、TRACEとScattとの比較をぜひ見たいものです。(イギリス・ルイスリップ)

 

  • 私はSCATTをお勧めします。それは大勢の人に使われていて、銃口軌跡から読み取れるデータの活用方法などが確立されているから、というのが理由です。SCATTは本質的に「診断」が想定された使用目的なので、データを読んでいろいろな判断をできる人が身近にいると有用性が大きくアップします。(国籍不明)

 

訳者注……「診断」を目的として、多種多様なデータを統計として出力する機能があるのはSCATTの製品ラインナップの中でも上位機種にあたる「MX-02」の機能です。私が購入した廉価版のSCATT Basicにはその機能はなく、ただ銃口軌跡と着弾点と点数が表示されるだけです。表示される情報の少なさは欠点でもありますが、シンプルであるということは利点でもあります。

 

  • 私はTRACEを発売当初に購入したユーザーの一人です。私は2つのシステムを買いました。一つは私と妻が使用するもの、もう一つが所属するクラブに永久貸与したものです。アーリーアダプターとして、私は初期バージョンをテストすることによって開発の手伝いを行いました。ソフトウェアは現在サード・バージョン、ハードウェアは少なくてもセカンド・バージョンにアップグレードされています。
    TRACEには、記録された情報を表示/呼び出す3つの方法があります。
    1.トレースライン……4色で描かれています。構え始めてからホールドに近づくショットプロセスが青色。撃発前の2秒間がオレンジ(調整可能)。撃発の直前0.2秒が赤。フォロースルーがグリーンです。画面の下部には、ショットのスコア、秒単位のショットの時間、トレースラインの長さが表示されます。
    2.射撃セッション中、一発と一発の間のインターバルに使った時間をチャートで表示することができます。
    3.撃発直前の1.4秒間、どれだけ銃を安定させることができたかをグラフで示すことができます。
    TRACEの開発者は他にも幾つかのトレーニングルーチンを追加しました。ホールド(例えば9リング)の境界を設定して、銃口軌跡がその境界の外に出てしまったら警告音を発するといったものです。
    TRACEとSCATTの明らかな違いとして挙げられるのは、統計結果の後処理です。
    射撃を始めたばかりの初心者である私(69歳ですけど)にとっては、地元のクラブで利用できるコーチングのレベルは限定されていることが明らかになった、というのが大きな収穫となりました。特に、自然狙点やグリップの改造、姿勢、トリガーの引き方、撃発の変化を評価する際に、多くの「非公式」コーチでは細かい指標を元に適切なアドバイスをするための訓練を受けていないためです。私が必要としたのは、自分の射撃プロセスと、それに加えたすべての変更を記録するものでした(良いか悪いか)。
    私は、これをいくつかの専門分野のアドバイスと組み合わせて、私自身の開発を行いました。 私はイタリアまで出かけてチェザーレ・モリーニ氏を訪れ、妻のLP10と私のMGH1を含むさまざまなピストルのグリップを調整したり修正したりしました。これは自然狙点を定めるのに非常に役立ちました。また、Skypeを利用して時差がある国外から自分でコーチを選び、「リモートコーチング」を利用しました。TRACEのスクリーンキャプチャや自分自身の射撃を撮影したビデオ、私がやっていたことや変わったことに関する定期的な会話を送ることで、私はTRACEを最大限に活用することができました。
    TRACEの開発者に聞いた内容ですが、彼らのプログラムにはSCATTのような、高度で完全な「統計的分析」能力をあえて持たせていません。その統計能力の大部分が実際には利用されていないというのが理由の一つです。TRACE本体の機械的/光学的なハードウェアは安定しており、よく開発されています。これは基本レベルの機能を備えており、料金に見合ったものになっています。将来的に機能性や統計分析能力を求める声が多くなれば、そういった機能が追加される可能性もあります。
    他になにかお尋ねしたいことがありましたら遠慮なくどうぞ。(国籍不明)

 

  • >TRACEとSCATTの明らかな違いとして挙げられるのは、統計結果の後処理です。
    くわしい報告をありがとうございます。
    詳しい統計結果こそ、かつて私が数人の射手に教えていたとき、最も有用だったものです。問題を特定し、考えられる原因を特定(または示唆)し、問題を解決するために変更を適用し、結果を確認します(通常、変更の導入後にしばらく時間がかかります)。
    インターバルタイムのチャートはSCATTでも利用可能です。やけにそれを重視する人が多いのですが、なぜなんでしょうね? 一射ごとのインターバルタイムが安定していると、何が良いのでしょうか。むしろ射撃中に違和感を感じたときにすぐにショットプロセスを中止できる射手のほうが良いと思うのですが。(イギリス・ルイスリップ)

 

  • >インターバルタイムのチャートを重視する人が多いのですが、なぜなんでしょうね?
    確かにその情報は、私にとって限定された価値しかありません。とはいえ全くの初心者射手が自分のルーチンを確立しようとしたときには、このチャートは助けとなるでしょう。
    私が「これは有用だ」と思っている機能が2つあります。
    1.射手が自分で特定の範囲(例えば9点圏内だとか、10点圏内だとか)を設定し、その範囲にどのくらいの率で軌跡を保持していられたかという数値
    2.軌跡が赤色表示される(撃発0.2秒前から撃発まで)の変位量
    これらは両方ともほぼリアルタイムで計算されて画面下部に表示されます。また印刷出力することもできます。個々のショットについて一つ一つ表示することもできますし、これを一連のショットの平均値を表示することもできます。(国籍不明)

……と、ここらへんまでは普通に「新しく発売された安価な製品についての情報交換」なのですが、この後にちょっとした急展開を迎えます。まず、「scatt_manufacturer」と名乗るユーザーより一つのYoutubeリンクが掲載されました。

 

scatt-vs-traceSCATTとTRACEを並べて比較
SCATT vs Trace Shooter Trainer Systems accuracy comparison test

※埋め込みが許可されていなかったので動画からのキャプチャ画像を掲載しています。


この動画は、万力に固定した銃身にSCATT BasicとTRACE10を取り付け、ターゲットの方を壁に固定したプロッタを使って動かすことで、カメラから入ってきたターゲットの動き(実際の使用状況ではターゲットが固定されていて銃が動くわけですが)をどこまで正確にトレースできるかをテストしたものです。ターゲットは「中心を狙った」状態からスタートし、10点リング→9点リング→8点リングと同心円を描くように外側に移動していきます。

動画を見ればわかりますが、SCATT Basicはターゲットの動きを正確にかつほぼリアルタイムに画面上に表示しているのに対し、TRACE10は銃口軌跡が円ではなくギザギザの多角形になってしまっている上に大きな遅延が生じてしまっています。少なくてもこの動画を見るだけでは、「TRACEの製品は、全く使い物にならない。金の無駄だ」という結論しか導き出せません……。

が、即座にTRACE側から物言いが付きました。Youtube動画へのコメント及びTargetTalkの掲示板上において、下記のような反論が投稿されたのです。

  • そのビデオを詳しく見てください。TRACEセンサーの上部に、なぜか理由はわかりませんが大きな穴が開けられています。そのことと、このビデオがSCATTの公式代理人によって作成されて投稿されたという事実を考慮に入れてください。このテストはそれぞれの製品の実際の性能を比較しているものではないということは、誰でも理解できることだと思います。
    TRACEチーム

遠回しに書いてはいますが、つまりは「SCATTの人間がTRACEを貶めるために、TRACE10に何か手を加えて精度を落とした上で、正常なSCATTと破壊されたTRACE10の比較を比較テストと称してUPしたものだ」と言ってるわけですね。

SCATT側からも反論が投稿されました。

  • TRACEはシステムを作る際にかなりのアイデアをSCATTから「借りた」ことは、目を2つ持ってる人ならすぐに分かることです。
    私たちは、TRACEがどれくらいSCATTをコピーしたのかを見たいと思いましたが、TRACEのプラスチック3Dプリントボディは普通の方法では開けることができなかったので、ケースの一部を切り取るしかありませんでした。
    中を見てみると案の定、TRACEはSCATTから多くのものをコピーしたことが判明しましたが、高品質のコンポーネントと作業はコピーしていないようです。TRACEの内部にあったのは、どう考えても競技射撃の解析に必要な精度と品質を持っていない安価な15ドルの中国のウェブカメラでした。
    このようなものが本当に使えるのかどうか疑問に思ったというのが、この精度テストをするきっかけとなりました。私たちがテストに使ったTRACEは、ユニット内部には全く手を加えていません。画像も添付します。
    trace1trace2trace3trace4
    いずれにせよ、私がSCATTの代理人であるという事実は、私の投稿がTRACEの代理人であるあなたの投稿に比べて信憑性を損ねるという根拠にはなりません。
    SCATTが25年以上かけて開発に取り組んできた製品が、世界最高の射撃競技者のトレーニングシステムとして使われているという事実が、私の投稿の信頼性を担保してくれると思います。その一方で、TRACEの信頼性は、SCATTのイミテーションをたった1年で作ったという事実が担保してくれることでしょう。
    いずれにしても、SCATTシステムの機能とTRACEの機能の違いについて、シューターが詳細を見ることができるように、別のTRACEデバイスを使用して、もう少し長く長く精巧なテストを公開する予定です(訳者注:この動画の投稿日は今年の6月15日、さらにこの書き込みはほんの数日前の投稿です)。さらに、SCATT社は主要な国際射撃競技会において、一連の自動化されたパフォーマンス、スピード、および精度の公開テストを実行する準備を完了しています。

訴訟社会に生きてる人たちだけあって言葉を選んだ書き方になっていますが、そういうオブラートを全部とっぱらって要約すると、こんな感じでしょうか。

SCATT「TRACEシステムとかクソだから。これ証拠!」
TRACE「捏造テストしてんじゃねえ糞SCATT氏ね」
SCATT「捏造なんかしてねーよ、そっちこそ悪質なパクリしといて良く言うわ氏ね、公開テストしてやるから首洗って待っとけ」

かなりストレートな中傷合戦です。泥沼化一歩手前です。どうなることやら。

なお上記の動画投稿後に、こちらは個人ユーザーと思われる人からTRACE10を使った同様のテスト結果を撮影したものがUPされました。SCATTのテストと異なるのは、ターゲットをプロッタを使って動かしているのではなく、数m先に置いたノートPCのディスプレイにターゲットを表示し、それをアニメーション機能を使って動かしているという点ですね。確かにこれならプロッタとか持ってなくても、誰でも同じテストを行うことができます。
 

 
こちらのテストではTRACEは十分な精度と処理速度を発揮しているようです。これが正しいとなると、先のSCATT側のテストは本当に何らかの工作が施された捏造テストだったか、あるいは(ほとんどありえないとは思いますが)運が悪く不具合のある製品を使用してのテストだったのか、でなければこのテストか先のテストのどちらかあるいは両方に何らかの環境的な問題があったのか、そのどれかということになります。

一社独占の状態から競合製品が出てきて、一気に値段が下がって機能が充実するってことはよくあることなので、もしそういう形になれば歓迎なのですが、「悪質なパクリ製品」が大手を振って出回るというのは業界全体にとってはあまり良くないことなのも事実です。はたして真実はどこにあるのか。こうなるともう、外野としてはバトルの行末を楽しく見守るくらいのことしかできませんね……。




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プロフィール

 
池上ヒロシ
各種雑誌にてライターをやっています。
銃器の構造、歴史、射撃技術などが得意分野です。メインフィールドはピストルを使った精密射撃です。
 
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